車のライトが乱反射する?多焦点眼内レンズがもたらす意外な症状
白内障手術後に起こる症状として、ハロー・グレアがあります。ハロー・グレアとは、白内障の手術で眼内レンズを挿入したことで、車のヘッドライトや街灯などの光が乱反射してしまい、光に輪がかかるようににじんで見えたり、光がぎらついて見えづらくなる現象をいいます。多焦点眼内レンズを使用する場合に起こりやすい症状ですが、最近ではハロー・グレアが出にくい多焦点眼内レンズも登場してきました。
光の見え方に変化を感じるハロー・グレア
ハローによって街灯などの光の周囲にボヤっとした光の輪のようなものが現れたり、グレアによって車のヘッドライトのような強い光がぎらつくような見え方が現れることがあります。
光がにじんで広がり、光の周りにリング状のもやがかかったように見える現象を「ハロー現象」、光がぎらついたり伸びたりしてまぶしく感じるように見える現象を「グレア現象」といいます。
共に白内障手術後に起こりやすい症状として知られています。
通常は、時間の経過とともに症状が軽快しますし、症状が続いても慣れて気にならなくなる方がほとんどです。しかし、見えづらさを感じる症状のため、手術後すぐに夜間の運転をしなければならないなどの事情のある方には、心配な現象でしょう。
ハロー・グレアはなぜ起こるのか?
この現象は、白内障の眼内レンズに関して言えば、複数の場所に焦点を合わせることのできる多焦点眼内レンズを使った場合に起こりやすい現象です。
構造上、光の焦点が複数の場所に分散するため乱反射が起こりやすくなり、こうした現象が起こります。裸眼でクリアに見える範囲が広がるという点において、多焦点眼内レンズは優れたレンズですが、こうしたデメリットが生じる可能性もあることには留意すべきでしょう。
なお、眼内レンズのメーカーもこの症状を解決しようと研究を続けており、ハロー・グレアを感じにくいレンズも増えてきました。
ただし、ハロー・グレアの症状がいつまでも続いたり、症状が強く出て生活上の不快感や不都合が強いと感じる場合は、患者様の希望次第で他のレンズと入れ替える処置をすることもあります。
ハロー・グレアが起こりやすいレンズ=ダメなレンズ、ではない
ハロー・グレアのほかに、「ゴースト」という、物が二重に見える現象が起こりやすい多焦点眼内レンズもあります。
とはいえ、ハロー・グレアやゴーストが起こりやすいから、そのレンズは性能が良くない、というわけではありません。
ゴーストが出現しやすいことで知られているのは、レンティスMプラスというレンズです。一方、このレンズは見え方がクリアで、単焦点に近い精度で近くも遠くもはっきりと見ることができ、さらに乱視矯正ができるトーリックタイプもあるなど、たくさんのメリットがあります。
ゴーストが出るか出ないかは入れてみるまでわかりませんが、多少のゴーストがあっても、満足できる見え方が実現できる可能性が高いレンズです。またハロー・グレア同様、しばらく経つと症状が治まったり、物の見え方に目(脳)が慣れてきて気にならなくなることが多いので、症状が出てもしばらくは様子を見ます。
ただし、症状がいつまでも続いたり、症状が強く出て生活上の不快感や不都合が強いと感じる場合は、患者さんの希望次第で他のレンズと入れ替える処置をすることもあります。
ライフスタイルに合ったレンズの選定が重要
眼内レンズに絶対的な良し悪しというものはありません。それぞれ、長所と短所があります。
そのため、選ぶ基準はただ一つしかありません。「その人のライフスタイルに合った眼内レンズを選ぶ」ということです。
ハロー・グレアは夜間の光を見たときに出現してくる現象ですので、夜間の外出がほとんどない人の場合、生活に支障を来すことはまずありません。また、個人の感じ方の違いもありますので、症状が強くても気にならない方もいるようです。