白内障を知る

目の手術で起きる角膜浮腫の重症化を防ぐには

角膜浮腫とは、角膜の一番内側の組織である「角膜内皮」にむくみが起こる症状を指します。目の手術で合併して起きることがありますが、ほとんどが一時的なもので、短期間で炎症が収まります。しかし、ごくまれに重症化して「水疱性角膜症」を発症し、角膜が濁ってしまうことがあります。そうなると「角膜移植」が必要になることもありますので、手術前の検査をしっかり行いましょう。

角膜内皮細胞がダメージを受けることで起こる角膜浮腫とは

角膜とは、俗にいう「黒目」の部分を覆っているドーム状の透明な膜のことです。水晶体とともに、光を屈折させるレンズの役割を持っています。角膜は5層構造になっており、角膜組織の一番内側にある「角膜内皮」には、内皮細胞がびっしりと詰まっています。角膜はレンズの役割をしているため、常に透明でなければなりません。そのため、血管も通っていません。

では角膜は、栄養や酸素をどのように取り入れているのでしょうか?

角膜に酸素や栄養を届けているのは、角膜上皮(外気から酸素を取り込む外側の膜)と、角膜内皮(目の内側を満たしている房水から栄養や酸素を取り込む内側の膜)の細胞の働きによるものです。特に、角膜内皮細胞は老廃物を排出するポンプの役割もあるので、この細胞が絶えず活動することで、角膜の透明性が保たれているのです。

しかし、角膜内皮細胞には大きな弱点があります。再生機能を持たないため、ダメージを受けるたびに細胞の数が減っていってしまうのです。

細胞の数が減ると、残った内皮細胞は大きくなって、隙間を埋めようとします。ただ、隙間が埋められても細胞の数が増えるわけではなく、ポンプの機能は低下し、老廃物を含んだ水分を排出することができず、角膜内に水分が溜まっていってしまうのです。

これが角膜浮腫です。

 

角膜浮腫は、軽症で一時的なものであれば、数日で元に戻りますが、角膜内皮細胞の機能の低下が著しいと、どんどん水が溜まって角膜全体に広がってしまいます。このため、角膜の濁りや、強い痛みを感じるようになります。この状態は、「水疱性角膜症」と呼ばれ、治療には角膜移植が必要になります。

重症化を防ぐために、手術前の検査は必須

白内障手術などの眼内手術をきっかけに、角膜に多量の水がたまる「角膜浮腫」が起こることがあります。

手術では角膜を切開しなければならないので、どうしても角膜内皮にダメージを与えてしまい、手術中も目の中の房水の流れによってダメージを受ける場合があります。これらのダメージが大きいと、角膜内皮細胞が減少して機能が低下してしまうのです。

ただ、基本的には術後、一時的なむくみが多いのでご安心ください。白内障手術は、どんどん進化しています。当院では、角膜の切開を極力小さくした「極小切開術」という手術を行うので、角膜内皮に与えるダメージは極めて限定的なものになります。

もし術後検診で角膜浮腫が見られたら、点眼薬を使っていただきます。すると一日二日で収まってきます。

 

このように白内障手術後に起きた角膜浮腫は、たいていの場合すぐに収まりますが、重症化することもあります。何らかの理由で、もともと内皮細胞の数が極端に少ない方が、白内障手術でダメージを受けてさらに減った結果、角膜浮腫を起こし、なかなか治らないということがあります。

特に、すでに別の眼内手術をされた方は、一般的に通常よりも角膜内皮細胞が減少しています。場合によっては、水疱性角膜症を起こす一歩手前の状態になっていることもあります。そのため白内障手術の前には、必ず角膜内皮細胞の数を確認する検査を行います。もし、内皮細胞の数が少なくてリスクが高いと判断された場合は手術を断念せざるを得ませんし、手術が可能と判断した場合でも、しっかりリスクを説明して患者さんが十分な理解をされてから手術を行うべきでしょう。

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