術後の失明リスクは定期検診で回避する
白内障の手術後、医師の指示に従って数回の定期検診が行われます。定期検診は炎症や感染症を防止したり、最小限に食い止めたりするために重要な役割を果たしています。
術後の定期検診はなぜ必要なのか
白内障はとても安全性の高い手術です。とはいえ、目の中に人工眼内レンズという異物が入るわけですから、「100パーセント、いかなるリスクも起こらない」と、言い切ることはできません。
手術直後は炎症や感染症のリスクがありますし、細菌の中には遅発性のものがあり、「もう大丈夫だろう」と思ったころに感染症を起こすものもあります。
大切なのは、何かが起こったときにいかに早く適切に対処して、問題を最小限にとどめるかということです。
そのためにも手術後の定期検診は非常に重要な意味を持っています。
術後検診のスケジュール
当院では、
➀手術翌日
②手術から4~5日目
③手術から8~9日目
④前回の診察から1週間後
⑤前回の診察から2週間後
⑥前回の診察から1ヵ月後
というスケジュールで検診に来ていただいておりますが、患者様の眼の状態により異なる場合もございます。
お仕事が忙しい方、遠方からお越しの方など、さまざまな事情の方が手術を受けられているので、「絶対的にこのスケジュールで」というわけではありませんが、手術の翌日は必ず午前中に診察をさせて頂きます。
ご遠方にお住まいの患者様の場合には、手術翌日の診察以降は地元の眼科をご受診いただくことも可能です。
術後の感染に関しては、翌日よりも翌々日あたりから出ることが多いです。
術後に炎症が強く出ている場合は、患者様に「目薬を点眼する回数を多くしてください」とお願いして、炎症が悪化するリスクを回避します。
自分では悪い症状か判断しづらい
みなさんが白内障の手術を受けた後、医師から「このスケジュールで経過を見させてください」と言われた場合は、極力従うようにしてください。
術後はどうしても軽い炎症が出ますし、見え方もすぐに良くならずに安定しない方もいらっしゃいます。それが危険なものでないか、自分の目がどのように回復しているのか、患者様自身で判断するのは難しいものです。たとえ危険な炎症が起きて、目の痛みを感じていても、つい我慢してしまう方がいらっしゃるのも事実です。「手術をしたんだから、このくらいは当たり前なのかなあ」で終わらせてしまいがちなのです。
そうならないように、必ず術後は検診を受けるようにしましょう。
なお、術後検診では眼圧のチェックや視力検査も行い、眼鏡による矯正が必要な患者さんには、いつごろ新しい眼鏡を作ればいいかなどのアドバイスもさせていただいています。
細菌性の眼内炎は24時間以内の対応が必要!
術後の合併症の中で一番怖いのは、細菌性の眼内炎です。一定の確率(2,000~3,000例に1件)でどうしても起こってしまうもので、切開創から細菌が入り込み、眼の中で増殖して炎症を起こします。最悪の場合、失明に至ることもあり、細菌感染による眼内炎は恐ろしい眼病の一つと言えます。
特に、術後数時間~数日で増殖する細菌は毒性が強く、視力低下を引き起こしやすいので、術後の検診はとても重要なものになるのです。
もし、細菌感染を起こしていても、適切な処置をすれば症状の悪化を最小限に防ぐことができます。
細菌感染の初期症状で多いのは、目の充血や痛み、目が見えづらい、ぼやける、といった症状です。白内障の手術後に、こうした症状が起きたら、一刻も早くかかりつけの眼科へご相談ください。