多焦点眼内レンズに「5焦点」タイプがあると聞きました。どんな見え方なのですか?
ご相談者様
白内障手術の予定があります。3焦点眼内レンズを入れるつもりなのですが、新しく5焦点の眼内レンズが発売されたと聞き、いったん保留にしました。5焦点の詳細を教えてください。
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情報が早いですね。5焦点の眼内レンズはイスラエルのHanita社から発売されたもので、製品名は「Intensity(インテンシティ)」です。2020年7月に発売され、日本でも9月より自由診療の枠で取扱いが始まりました。眼内レンズは、ここ10年ほどの間に次々と画期的な新製品が開発・発売されてきましたが、5焦点は世界初です。また、従来の製品はほとんどが欧米製でしたから、今回の新製品がイスラエル製というところも目新しいですね。
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ひとくちに「多焦点眼内レンズ」といっても様々あるようですが、焦点が最も多いものといえば3焦点でしたよね。5焦点の見え方というのは、いったいどんな感じなのでしょうか?
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わかりやすいように簡素化して説明しますね。3焦点眼内レンズは、従来の2焦点が備えている2つのピント、「遠方」と「近方」に加えて、その「中間」にも焦点が合うようになり、遠くから近くまでほぼ万遍なく見えやすくなった眼内レンズです。今回の5焦点眼内レンズは「遠方」「中間」「近方」の3つの焦点間のほか、遠方と中間との間にあたる「遠中」、そして近方と中間との間にあたる「近中」という2つの新しい焦点が加わりました。その結果、3焦点眼内レンズよりさらに万遍なく、クリアに見えるようになったといえます。
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生活のシーンで、近くも遠くも中間も、よりよく見えるようになったということですか。
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最近の3焦点眼内レンズは多機能で、中間から遠くまで、視線を移しても、ボヤけるなど焦点の移動を感じることがなく、スムーズに見えるような製品も出ています。そのため中間・遠方を見る分については、3焦点も5焦点もそれほど差を感じないというのが正直なところです。
しかし近距離に関しては、5焦点のほうが手元がよりよく見えると感じる人が多いはずです。実際、従来の眼内レンズでは、近距離の焦点を50cm、60cmあたりに設定しているものが多かったのですが、この5焦点はそれより短い40cmに設定してあり、従来製品よりも近くがよく見える作りになっています。新聞や本など手元で活字を見る機会の多い日本人にはぴったりで、いっそう快適な眼内レンズといえるでしょう。 -
なるほど、近くの見やすさがパワーアップした眼内レンズなのですね。しかも日本人のライフスタイルに合っているので便利であると。それはそうと、私が手術で入れる予定をしていた3焦点眼内レンズを含めて、多焦点眼内レンズには夜のドライブなどのシーンでまぶしさを感じやすい製品が多いと聞きます。5焦点の場合はどうなっているのでしょうか?
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その点においても、最近の多焦点眼内レンズは従来製品よりだいぶ改良されており、まぶしさを感じることはかなり少なくなってきています。しかし焦点が増えた分、製造技術的には「光エネルギーのロスの配分」、「ハロー・グレアの軽減」などが難しくなるはずなのに、この5焦点は最近の3焦点の製品に引けを取りません。夜のドライブにおいても、肉眼とは異なるので多少の違和感はあるかもしれませんが、慣れればほとんど気にならなくなるはずです。
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お聞きしていると、すぐにでも5焦点に変更してしまおうかなと思ってしまいますね。ちなみに短所はないのですか?
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ないことはありません。このレンズの適応面で合わない方がいらっしゃると予想されます。いわゆるレンズのパワー幅が狭いので、強度の近視の患者さんに合うレンズがない可能性があります。また、今のところ「トーリックレンズ」という乱視矯正が可能なレンズがないので、乱視の患者さんにも合いません。ただトーリックレンズは今後出る予定と聞いていますので、導入されしだい患者の皆さんにお知らせしたいと思います。
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強度近視や乱視があると合わない可能性があるのですね。でも、総合的にはやはり魅力的な眼内レンズといえそうです。
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読書やPCを始めとして、毎日の運転やゴルフ・テニスなどのスポーツまで、幅広いシーンに対応できる眼内レンズです。ぜひご検討ください。