近くがよく見えるようになってきたのに、白内障と診断されました…手術は必要なのでしょうか?
ご相談者様
68歳です。以前まで見えづらかった近くのものが、だんだんと見えるようになってきて、老眼が治りつつあるように思います。新聞など老眼鏡をかけずに読むことができるようになりました。ところが最近、白内障と診断されたのですが、手術は必要なのでしょうか。
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近くのものが見えるようになってきたのは白内障のせいだと思います。どういうこと?と思われるかかもしれませんが、白内障は、目のレンズにあたる、水晶体が濁る病気です。同時に、水晶体の中心部分の核と呼ばれる部分が硬くなる病気でもあります。すると、レンズの屈折率が増して近視化します。つまり、近くのものが見えやすくなるのです。これを老眼が治ったと錯覚してしまうケースが少なからずあります。
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そうなのですか・・・。でも近くのものがよく見えているのなら、それはそれでいいことで、本当に手術は必要なのか、疑問に思うのですが・・・。
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いえ、近くがよく見えるのは一時的なものです。今後も確実に白内障は進行していきますが、水晶体の核も一段と硬くなり、それに伴い、屈折率もさらに変化します。結果、視力が低下し、近くのものも見えづらくなっていきます。
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近くのものがよく見えるのは白内障の症状のひとつで、一時的なものなのですね。
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白内障には、いろんな分類の仕方があります。水晶体の濁る箇所で分ける方法が患者様への説明でよく用いられますが、大きく分けて3つのタイプがあります。水晶体の中心部分の核の濁りと硬化が顕著なタイプの白内障を核白内障といいます。そのほか、核の外側の皮質の濁りが先行する皮質白内障、水晶体全体を包んでいる袋状の嚢の前または後側の皮質が濁る前嚢または後嚢白内障があります。このなかで近視化して、近くのものが良く見えるようになったと錯覚しやすいのが核白内障なのです。
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近視化によって、近くのものがよく見えるようになるのはどれくらいの期間なのでしょう?
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水晶体の硬化のスピードにもよります。また、硬化と同時に水晶体が少しずつ肥大化して厚みも増すので、これらによって屈折率も影響を受けます。したがって、メガネなしで新聞が読めるようになった、近くのものがよく見えるようになった、という時期も期間も人によってさまざまですが、1年から長くても数年という方が多いように思います。
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近くが見えるようになったからといって、白内障の手術を躊躇することはないということですね。
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白内障の手術はそれが必要と納得して受けていただくことが大切ですから、何か疑問に思われたら医師におっしゃっていただくのがよいですね。これまでの経過をお聞きしたり、場合によってはより詳細な検査をすれば、すぐにお答えできると思います。
ただし、白内障の手術を先延ばしにすることのメリットはさほどありません。早く手術を受けていただければ、今とは比較にならないほどよく見えるようになります。近くのものも然りです。目が若返ると比喩したくなるほど、クリアな視界を得ることができます。「よく見えるようになったので手術は不要」という錯覚によって、クリアな視界を得る時期が1年~数年も遅くなるのは、実にもったいないと思います。