レーザー白内障手術で可能となった高度な治療とは
2000年代初頭に眼科手術で使われるようになったレーザーメスの一種、フェムトセカンドレーザー。
このレーザーを使用した白内障手術が行われるようになり、角膜や前嚢の切開などを自動的かつ正確に行えることによって手術の安全性・安定性が著しく向上しました。
フェムトセカンドレーザーは目の組織に余計なダメージを与えない
白内障手術に使用されるようになったフェムトセカンドレーザー。「フェムト」は1000兆分の1を、「セカンド」は秒を意味しています。つまりフェムトセカンドレーザーとは、1000兆分の1秒という短い間隔で照射できるレーザーのことです。
非常に短い時間で分子結合を切断することができるため、熱を発生することなく施術でき、周囲の組織に影響を与えないのが大きな特長です。
フェムトセカンドレーザーを手術工程の一部に使った白内障手術をFLACS(Femtosecond laser-assisted cataract surgery)といいます。
日本ではアルコン社のLenSx(レンズエックス)という機械がFLACSの国内承認を最初に得て、発売が開始されました。
当院では、2014年1月に発売開始されたこの機械を日本で最初に導入し、高精度な白内障手術をいち早く実現しています。
角膜の切開~水晶体の粉砕を自動で、正確に行うことができる
白内障の手術において、フェムトセカンドレーザーによって以下の施術を行うことができます。
1 角膜を切開する(乱視矯正のための角膜切開も可能)
レーザーによって正しい位置、大きさ、深さの切開創を作ります。
2 水晶体を包む嚢を切り開く
レーザーによって正円に近い形で、また適切な大きさに前嚢を切開します。
3 水晶体を細かく分割する
水晶体の中身を細かく分割して破砕します。乳化吸引する際に超音波のパワーを抑えることができるので、目の組織への影響を軽減することができます。
従来は人(医師)の手で行っていた、角膜を切開し、水晶体を包む嚢(のう:袋のこと)に穴を開け、水晶体を砕くという一連の作業を、非常に短い時間で自動で行えるということが最大のメリットです。
切開創を作る場所、大きさ、形などの指定がすべて自動で行えるだけでなく、人の手では難しい角度で切開創を作ったり、水晶体を2000以上に分割するなど細かく砕いて取り出しやすくしたりと、さまざまなことが可能になります。
人の手を使うと誤差が生じる可能性がありますが、フェムトセカンドレーザーを使った場合は事前の手術プランを完璧に手術に落とし込むことができます。
例えば、前嚢の切開の大きさは使用する眼内レンズによって異なります。
眼内レンズによっては、直径5.7㎜がベストだったり、あるいは6㎜がベストだったりするのです。
医師の手で行う場合、誤差が生じやすいので、必ずしもベストな大きさになるとは限りません。
ところがフェムトセカンドレーザーを使うと、自動で指定した通りの大きさに切開することができるのです。
誤差なく施術できるため、細菌感染などの合併症リスクも軽減する
また、予定した通りにレーザーが自動かつ正確に施術をしてくれるので、目の組織へのダメージを最小限に抑えることができ、合併症が起こるリスクを軽減できるというメリットもあります。
人の体は、内部に手術器具が侵入することや、切開による傷(切開創)が外の空間と繋がることで、外界にある菌が体内に侵入するリスクにさらされます。
手術のあと、傷の治り具合を医師が気にするのはそのためです。
傷の治りが早ければ早いほど、細菌感染のリスクは軽減し、遅ければ遅いほどリスクが高まります。
白内障の手術の切開創もなるべく早くふさがることが望ましいのですが、それを可能にするのがフェムトセカンドレーザーです。
皮膚に対して垂直に入った傷は治りにくく、斜めに入った傷は治りやすいという経験をしたことはありませんか?
それと同じことが、白内障手術の切開創にも言えます。
医師の手で切開創を作る場合、メスを入れる角度に制限が生じますが、フェムトセカンドレーザーなら切開の角度を自由自在に指定できます。
傷のふさがりやすい角度での切開が可能なので、細菌感染のリスクが大幅に軽減できるのです。