赤ちゃんが白内障になることがあると聞きました。遺伝による発症なのでしょうか?
ご相談者様
妊娠中です。やっと授かった命なので大切にしたいのですが、赤ちゃんも白内障になることがあると聞き、とても心配です。白内障といえば高齢者がかかる病気というイメージですが、私は早くも兆候が現れてしまい…。考えてみれば、両親ともに白内障を発症しています。もしかして遺伝的なものなのかと思い、私の赤ちゃんにも高い発症リスクがあるのではないかと不安です。どうなんでしょうか?
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これまで以上に健康を気遣いたい時期ですから、色々なことが心配になりますよね。でもいくつか誤解なさっていることがありますので、説明を聞いていただくことで気が楽になる部分もあるかと思います。確かに、生まれつき瞳が白く濁っている赤ちゃんがいます。これは先天白内障といい、遺伝性のものや風疹などの妊娠中の病気が原因で起こるもの、原因不明のものも少なからずあります。
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やはり遺伝性のものがあるんですね。
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いえ、ここでいう遺伝性の白内障とは、あなたが思っていらっしゃる血筋的な意味合いの”遺伝”とは違うのです。ご両親が発症したのは高齢になってからのことかと思われますが、それは加齢性の白内障で、70~80歳代になれば誰にも現れる症状です。病気というより一種の生理現象ということもでき、遺伝性の疾患ではありません。また、目に大きな衝撃を受けることや、アトピーや糖尿病といった病気が一因となることもあり、若年層の発症も珍しくないのですよ。
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仰るように、両親が白内障になったのは70代を過ぎてからのことでした。加齢によるものだったのですね。それでは、遺伝性の白内障とはどのようなものでしょうか?
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たとえば常染色体優性遺伝病です。両親から受け継いだ対の常染色体の遺伝子のうち、片方が正常であっても、もう一方に異常があれば発症する遺伝病です。全身の至るところで発症するのですが、今までに2000種類以上も見つかっていて、日常生活を送るうえで支障があるものからそれほど影響のないものまで様々です。なかでも遺伝性白内障は、対処が不適切だと生活に影響を及ぼしかねない疾患です。
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そうなのですね。先生が仰る通り、私は漠然とした血筋的なものをイメージして「遺伝性の白内障」といっていました。本来の遺伝性白内障はそれとはまったく違うのですね。私が心配しているようなことは起きないとわかり安心です。
とはいえ万が一の場合もありますし、対処によっては日常生活に支障が出るかもしれない、というのは気がかりです。赤ちゃんの白内障を見つけるには、どういった点に気をつければよいでしょうか? -
目が揺れる「眼振(がんしん)」や、見ている方向に対して片目が追いついていなかったり別のところを向いてしまったりする「斜視」は弱視の症状ですから、注意しましょう。放置すると治療困難となります。
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見つかったらどうすればよいですか。
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程度が軽ければ経過を見ていきます。しかし重度のケース…混濁の度合いが強い先天白内障であれば、赤ちゃんが視覚を形成するうえで重要な視覚刺激を遮断してしまい。生涯にわたる視力障害をきたす恐れがあるので、水晶体の濁りを取る手術をします。よい視力を獲得するには、両目の場合は生後10~12週、片目の場合は生後6週までに手術を受けなくてはなりません。その後はメガネやコンタクトレンズによる矯正、弱視訓練が不可欠です。約1万人に3人の割合で起こる稀な病気ではありますが、瞳が白濁している場合にはただちに眼科を受診して、的確な診断および治療を受けるようにしましょう。
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わかりました。とても参考になる情報を知ることができてよかったです。