白内障手術後、家族旅行で海へ行く予定があります。泳いでも大丈夫でしょうか?
ご相談者様
家族旅行を楽しみにしていたのですが、白内障が判明して旅行の前に手術を受けなければならなくなりました。手術から1週間後の旅行ですが、海で泳ぐことは可能ですか?
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お仕事が多忙で、手術日を自由に選ぶのが難しい方は多くいらっしゃいます。勤務先にも家族にもなるべく迷惑をかけたくないということで、タイトなスケジュールの合間に手術日が入ったのですね。結論から申し上げると、念のため、泳ぐことは避けてください。しかし、条件次第では海に入ることができるかもしれません。
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どんな条件でしょうか?
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言うまでもありませんが、傷口から細菌が入って感染を起こす細菌性眼内炎を防がなければなりません。失明につながることがあるからです。きれいに見える海水も、どんな菌に汚染されているかはわかりません。
したがって、感染のリスクを極力低くするために目が海水に浸かるのは厳禁、これが条件となります。手術後1週間も経てばおおかた傷口はふさがっているはずですが、傷口の回復具合には個人差があります。また仮に菌が侵入しても、撃退する免疫力が体調によって低下している場合もあります。ですから念のため、目が水に浸からないようにしたほうがよいでしょう。 -
細菌性眼内炎はどんな菌が原因で、どれくらいの頻度で起こるのですか?
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原因となる菌としてはブドウ球菌が最も多く、次いで緑膿菌です。その他、いろんな菌が原因となります。
最も多いブドウ球菌は、皮膚や鼻腔などに普通にいる細菌で、粘膜表面にいるときは無害ですが、軟部組織や中耳、そして眼などに感染すると炎症を起こします。白内障手術の安全性には、ここ20年ほどで目をみはるものがあります。手術創の極小化に加えて、術後の感染症に対する管理が飛躍的に改善したからであり、近年の細菌性眼内炎の頻度は0.1%未満、1000人に1人未満といわれています。 -
数値的にはわずかな危険性といえるかもしれませんが、たとえ1000人に1人の割合でも誰かに必ず感染が起こるとすれば、決して低い数値ではないように思え、怖くなります。
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そうですよね。ですからできる限りの防御をしなければなりません。
海に入る際には、ゴーグルを着けることをおすすめします。ゴーグルの隙間から海水が入って、目が濡れてしまうことはよくあります。また頭髪が濡れて海水を含み、海岸に上がったとき目に垂れてくることもあります。わずかな量の海水でも、そのなかに細菌がいる可能性は否めないので、用心するに越したことはありません。海に入るとしても、首から下までにしておくほうが良いでしょう。 -
わかりました。そのようにしたいと思います。
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さらに可能であれば、旅行出発前に受診して傷の回復具合を確認するのがいいですね。順調であれば医師も、今申し上げたようなことをアドバイスしつつ、海に入ることを許可してくれるはずです。