白内障手術の後、見え方が安定するのはいつ頃でしょうか?
ご相談者様
白内障手術後、「よく見えるようになった」と実感できるのはいつ頃からでしょうか? 術後はなるべく早く仕事に復帰したいので、見え方が安定するまでどれくらいかかるのか、見え方がどう変わるのかも気になります。
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手術後の見え方は、患者さんにとって最も気になるところですよね。最終的にはほとんどの方がよく見えるようになりますが、手術後の経過には個人差があります。手術日は前準備として目薬で瞳孔を大きくするのですが、手術から4~5時間ほど、瞳孔が元のサイズに戻る過程で「よく見えるようになった!」と感動する方もいらっしゃいます。一方で、手術終了から数日間にかけて、手術による炎症が解消されたり、眼内レンズでの「新しい見え方」に慣れたりして、見え方の改善を実感する患者さんもいらっしゃいます。
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手術直後だったり数日後だったり、意外と個人差があるのですね。同じ手術を受けているのに、一体なぜですか?
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個人差の要因には、年齢や、角膜・網膜などの「視力をつくる器官」の状態や若々しさ、白内障以外の眼科疾患や、糖尿病などの全身疾患の有無、さらに手術の方法や挿入した眼内レンズの種類など、様々なものが考えられます。とはいえ時間がかかるタイプでも、それはあくまで「本来のクリアな視界」になるまで、という意味でのお話なので、別に「目が見えない期間がある」というわけではないのです。日帰りで白内障手術を受けて、交通機関を利用して歩いて帰宅することも可能です。
また、手術当日は安静にするようお伝えしていますが、身体に負担の少ないデスクワーク等であれば、翌日からお仕事に復帰して大丈夫ですよ。
ただ、見え方の「質」については、安定するまでにしばらくかかる場合があります。書類やデスクトップPC、スマホなどを使うとき、文字を読むこと自体は問題ありませんが、数時間で目の疲れを感じたり、ぼやけたりするかもしれません。でも数日から数週間でよく見えるようになりますから、ご安心ください。 -
なるほど。「よく見える」という状態は、視力だけでは測れないところもあって、見え方の質も大事なのですね。ちなみに視力以外で、手術後に生じる変化はありますか?
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術後、一時的に変化を感じる場合があります。ひとつは「まぶしさ」です。水晶体の濁りにさえぎられていた光が、濁りを除去したことによって大量に入ってくるようになるからです。ですがこの眩しさは白内障が治ったという証であり、慣れるにつれて気にならなくなるので、ご安心ください。気になる場合はサングラスをかけてもよいでしょう。
また「視界が青みがかって見える」という方もいらっしゃいます。実は、水晶体は加齢とともに黄みがかっていき、青色の波長の光をさえぎるようになります。白内障手術ではその水晶体を透明な眼内レンズと換えるわけですから、青色が鮮やかに感じることがあるのですね。これも時間とともに本来の見え方に慣れていきますが、気になる方は茶系のサングラスをかけることで軽減できます。 -
そんな変化が現れることもあるのですね。知りませんでした。
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他にも、視界に糸くずに似たものや黒っぽいものが見えるようになる方がいます。これは「飛蚊症(ひぶんしょう)」といって、硝子体にある混濁が影となって網膜に映し出されるために起きる症状です。ほとんどは加齢によって自然に発症するのですが、白内障があると水晶体が濁っているため、飛蚊症の症状を感じにくくなっています。手術で濁った水晶体を取り除くと、影が目立つようになり「何か黒いものが見えるようになった」と感じてしまいます。ただし、まれに網膜剥離などの危険な疾患の前兆として現れていることもあるので、一度検査することをおすすめします。
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視力が改善されること以外にも、様々な変化があるのですね。参考になりました。
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手術後は経過観察をスケジューリングしています。視力を含めて、見え方に以前とは異なるところを感じた場合は、その診察時に遠慮なくご相談くださいね。その症状が正常なものかどうかは、担当医がしっかりと調べて判断します。
総括すると、手術後、視力や見え方が安定するまでには1~3ヵ月ほどかかると考えていただくとよいでしょう。ストレスを排除することは、見え方の回復にもよい作用を及ぼすという報告もあります。快適な生活が待っていますので、焦らず楽しみに過ごしていただければ何よりです。