白内障手術を「受けるべきタイミング」は、どのように判断するのですか?
ご相談者様
白内障手術を受けるべきタイミングは、どんなときなのでしょうか? 調べても「見え方に不便を感じたとき」とか「早期に」とか、バラバラな意見がでてきます。様々な考えがあるのはともかく、専門知識のない私でも使える指標があればと思うのですが…。
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実は現状、白内障を診断するうえで「こうなったら手術を促しましょう」という明確な統一基準はありません。だから色々な意見が見られるのですね。その1つとして「見え方に不便を感じたとき」という考えは、大方のケースでは当てはまるのですが、一部ながらそれでは遅すぎる場合もあるのです。また「早期に」というのもなかなか基準があいまいで、どの時点のことを指しているのかがわかりにくいですよね。
それでは、どのように「手術の必要性」や「緊急性の有無」を確認すればよいのでしょうか。ここでは「すでに白内障の診断を受けていること」を前提に、それらの指標となる「4つの検査」をご説明しましょう。 -
白内障手術を受けるべきか否か、早急に受けるべきか、将来的には受けるべきか…これらを判断するのに役立つ「4つの検査」があるのですね。ぜひ教えてください。
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1番目は「視力検査」です。簡便ではありますが、手術の必要性を判断する「入口の検査」として、とても重要なんですよ。
同じ白内障でも、視力低下はまちまちで、あまり変化がない場合もあれば、かなり早く落ちていく場合もあります。ただし、視力がよいから早期手術の必要はない、遅らせてもよいというわけではありません。反対に、視力が低下しているから手術を急がなくてはならない、というわけでもないのです。
また、白内障における視力検査は、経時的な結果が重要です。たとえば「半年から1年間にかけてどのように推移したか」ということです。その記録がなければ、患者さん自身に見え方の変化を尋ねて、手がかりとして使います。もし視力低下が右肩下がりであれば、白内障の進行度合を疑う要素になって、それを確かめる「次の検査」へ繋げます。 -
視力検査といえば、毎年の健康診断で受けるお馴染みの内容ですね。簡単なのでつい軽視しがちですが、そのような見方もあったとは…。たった1回分の検査の数値ではなく、複数回かつ継続的に見た数値から判断するのであれば、信頼性の高い手がかりになりそうですね。
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手術の必要性を判断するには、視力の数値以外にも様々な情報を集めなくてはいけません。その一環として行うのが、2番目の「コントラスト感度検査」です。この検査では大きさや色、濃淡が異なる様々な「指標」が描かれた機器を使い、それぞれの指標を交互に表示していきます。患者さんは、指標が見えたらボタンを押す、という作業を繰り返します。
大きさの異なるものの濃淡がどの程度までわかるか、つまりどれくらいくっきり見えるのかということに加えて、眩しさによって見え方にどれくらい影響が出るのかを調べることで、検査時点で白内障がどれほどの影響を及ぼしているのかを推測します。また、この検査結果は、手術後にどれくらい見え方が改善されたか、という評価に役立てることもできるのですよ。 -
この検査は受けたことがありませんね。「コントラスト」や「感度」といった言葉から、何を調べる検査なのかはイメージできますが…。やはり一般にはあまり行わないような、珍しい検査もあるのですね。
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3番目は「前眼部OCT検査」といって、手術の適用と緊急性を見定めるためにとても重要です。「前眼部」とは文字どおり眼球の前方、一般に「白目」や「黒目」といわれる部分をまとめて呼ぶものです。この検査では、前眼部を立体的に撮影して、角膜の形や厚みを測定して数値を算出、解析することができます。
もちろん、それだけではありません。目のなかには、眼球の形状を保つために「房水」という液体が循環しているのですが、前眼部OCT検査では房水の出口である「隅角(ぐうかく)」の開き具合や、水晶体の厚みまで見ることができます。
実は白内障になると、水晶体は濁るだけでなく厚みが増して大きくなるのです。すると隅角が狭くなり、房水がうまく排出されません。溜まった房水は、眼球の形を保つどころか、内側から強く圧迫するようになります。これこそ眼圧が急激に高くなる「緑内障発作」で、失明のおそれもある危険な状態です。一刻も早く手術をしなくてはなりません。
前眼部OCT検査で水晶体や隅角の様子を確認すれば、患者さんの目に発作の前兆があるかどうかを判断できるのです。だから緊急性の有無を判断するのに役立つのですね。 -
写真を撮るだけでそこまでの解析ができるなんて、すごい検査ですね。
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4番目が「細隙灯(さいげきとう)顕微鏡」による観察です。この検査では水晶体が濁っている場所やその範囲、濁り具合をみることができるので、白内障の進行度合いがわかります。
もし患者さんから「白内障の症状が強くなった気がする」という相談があって、日常生活に支障が出ているとわかれば、手術をおすすめしています。その際、患者さん自身が進行具合を確認できるよい証拠にもなるのですよ。 -
手術の必要性を判断する決定打ともいえる検査ですね。よくある「見え方に不便を感じたら」や「早期に」といった感覚的な基準でなく、客観的に判断できる指標があるとわかってすっきりしました。ありがとうございます。